お絵かき講座②「アタリ」で絵はうまくなる!

2017.10.16
「子どもに絵を描いてとせがまれるけれど、うまく描けません。いまからでもうまくなる方法はありますか?」

そんな2児の母・清水さん(35歳)の悩みを解決するために、美大出身でイラストレーターの戸田江美先生をお招きして、絵の書き方を習ってみることにしました!「先生〜! 大人になってからでも、絵のセンスがゼロでも、絵がうまくなる方法って、ありますか?」

連載2回目の今回は、いよいよ具体的な実習に入ります! 最初のお題は「柴犬」。先生の指導によって、清水さんの絵が短時間で劇的に変わりはじめます。一体、なにが起きたのでしょうか? 聞き手は、所員の池田です。
きょうの先生
戸田江美(とだ・えみ)さん
合同会社「SKY PICNIC」所属のグラフィック/Webデザイナー。武蔵野美術大学卒業。美大生時代からコーポレートサイトデザインを複数制作したのち、「面白法人カヤック」にてゲームUIデザイナーを経験。日本人若手写真家として選抜され、NEW YORK ART BOOK FAIRをはじめとした5か国9都市のアートブックフェアに出品。イギリスと日本共同主催のフォトコンテスト「Photosbook show」に入賞しブライトンにて展示されるなど、国内外で活動している。東京都荒川区のトダビューハイツの大家。落語が好きで寄席通いもしている。

前回、清水さんが描いてくださった絵がこちら。

犬その1
犬その2

絵は、どこから書きはじめればいいの?

戸田
清水さんが書いている様子を見せていただくと、ササッと「一本線」で書いているんですよね。最初に練習するときは、もっとこまかく「アタリ」をつけながら描いていくほうが、きっとうまくなるんじゃないかと思うんです。
池田
アタリというのは、絵を描くときに、おおまかな位置とか、バランスを決めるときの目安になる点や線のことでしたよね。
これが「アタリ」
戸田
はい、そうです。さっそく練習してみましょう~!
清水
はい!
戸田
じゃあ、「柴犬」の写真を見ながら描いてみましょうか。
清水
うーん、まず、どこから書きはじめればいいですか? こんなこと聞くのは恥ずかしいんですが、そこからわかんないんです……。
戸田
そうですねえ……慣れるまでは、最初に耳と輪郭をとってしまうほうがバランスをとりやすいと思います。
清水
じゃあ、耳から描いていきますね。(描きはじめる)
戸田
あ、ちょっと待ってください。いま、一本線でパパーッと描いてしまったので、バランスが取れなくなって、耳の大きさに対して、あごが狭くなっちゃいました。ぜんぶ描く前に、こんなふうに、先にどのくらいまであごが来るかをイメージして、「点」をうっておくと、失敗しなくなりますよ。これが「アタリ」です。
顔をどんな大きさにするか、「アタリ」をつけると失敗しない
清水
ほんとですね! なにも考えずに、なんとなく描いちゃうからいけないんですね。たしかに、もっとちゃんと見ればいいんだ……。
戸田
うんうん。ちょっとずつ、ちょっとずつ描いてみましょう。柴犬をよく見てみると、あごのあたりがもふもふしてますよね? ここが柴犬のかわいいところなので、モフっとさせてみましょうか。
池田
なるほど~。前回「見る」ことが大切だって、先生はおっしゃってましたよね。こういうところを「見る」ってことなんですね。
清水
あっ、ほんとだ。たしかに柴犬の白いもふもふしたところ、さわりたくなりますよねえ。輪郭がかけたら、つぎはどこを描いたらいいんですか?
戸田
鼻が顔の中心にあるので、眼や口よりも先に鼻を描いておくと、バランスが取りやすくなるかなと思います。このときも、鼻を描こうかな? と思う位置に、ちょんと点を打ってみる。そうすると、バランスがくずれないかどうかがイメージしやすくなります。
清水
はい、私も描いてみます。あ、この位置だとちょっと上すぎる……もう少し下にアタリをとりなおして……うん、これならうまくいきそう。なるほどー! こうやって描くだけで、一発で描いているように見えても失敗しないんだ。いつも、なんとなく一発で描いて、直すのが面倒だから描き直さなかったな……。
戸田
そうそう! うまい人は、頭のなかだけでどう描くかイメージして、ささっと描けちゃうんですけど……最初のうちは、「アタリ」を描いてみるだけで、すごくラクになりますよね。
「そうなんだ!」と子ペンギンもびっくり

「これを描いたら、柴犬っぽくなる」部分を見つけよう!

清水
つぎはなにを描いたらいいですか?
戸田
そうですね、輪郭と鼻を描いたので……じゃあ、柴犬の特徴ってどこだと思います? ほかの犬とはちがう、「柴犬っぽいポイント」ってどこですかね?
清水
えーっと……目が印象的です。ちょっと吊り目っていうか。
戸田
じゃあ、そこを描いてみましょうか。こんなふうに、「特徴はどこかな?」って考えるのもすごく大事かなって思います。なにを大事にして描いたら、柴犬みたいに見えるかな? って考えていくんですよ。もようかな? 眼の形かな? それとも、胴体の形かな? って。
清水
あっ、似顔絵を描くみたいなイメージですか?
戸田
そうそう。特徴をとらえて、そこを目立たせるために、どうやって描くかを考えるんですよね。これも、どのあたりに目があったらいいかな、ってアタリを取ってから描いてみましょう。アーモンド形なのが特徴的ですね。
柴犬で印象的な、アーモンド型の目
池田
なるほど。アーモンド型の目か~。やっぱり先生は「特徴」をとらえるのがお上手ですよね。
清水
あっ、目が離れすぎた。
戸田
目って、離れすぎると間抜けになるし、近すぎると不格好になるんです。ちょうどいいバランスを、アタリで見つければ大丈夫!
清水
はい!! 描けた〜。なんか、私の絵とは思えないくらい、犬っぽくなった! あと、どこが柴犬っぽいかなあ……あっ、まろっぽい眉も印象的かも!
戸田
そうですね! じゃあ、私も描いてみますね。まろ眉、こんな感じかな。
「まろ眉」を描き足します
清水
あっ、かわいいですね。私もまろ眉描き足してみます。それから……口ですよね。
戸田
あとちょっとですね! 芝犬といえばやっぱり、この「口角が上がっている」感じがポイントですよね。ちょっと大げさなくらい、ぐいっと口角を上げて描いてみてもいいかもしれません。
清水
このときも、どこまで口が来るか、アタリをつけたほうがいいですか?
戸田
そのほうが、うまくいきそうですね!
清水
はい!

ついに完成! どんな柴犬ができあがったのか!?

戸田
よし、完成! わたしの柴犬は、こんなふうになりました!
先生の柴犬、完成です!!!かわいい!
清水
わたしもできました!!!
戸田
やった! 見せてもらってもいいですか? なんかドキドキする……。
清水
わたしもドキドキします……。これです!
ついに清水さんの柴犬、完成!
戸田
わあ! かわいい!!!!
喜ぶ戸田先生
池田
めっちゃうまくなってるじゃないですか!!!! すごい!!!!
清水
ホントですか! うれしい〜!!
池田
ちょっと、最初の犬と比べてみます? 最初に描かれたのは、これ。
清水さんが最初に描いた犬。よく見ると、鼻からひげがはえてる
清水さんの犬、2枚目。奥行きのあるやつ
池田
そして、先生の指導のもと描いたのが、これ!
清水さんが先生と一緒に描いた絵
清水
ぜんぜんちがう!!! すごーい! こんなの初めて描いた!!!
戸田
やりましたね!!! すごく上手になったじゃないですか〜!
清水
ありがとうございます。アタリをつけるのと、きちんと描くものを見て、なにを特徴的なのかを考える……それだけでこんなに違うんですね。
戸田
わたしも驚きです(笑)
池田
ほんとに、びっくりするほど変わりましたね!! この調子で、アイドルの女の子も描いてみましょうか!!!
清水
はい! なんか絵を描くのが楽しくなってきた〜!
池田
じゃあ、まずは清水さんひとりで描いてみていただけますか?
清水
はい!
池田
はい、では待ってますね!
清水
できました……なんか、さっきの柴犬みたいには、描けなかったです……。
池田
見せてください!
清水
はい……
清水さんがひとりで描いた、アイドルの絵
戸田
あっ、でも、だいぶ上手になっている気がしますよ!
清水
もっとかわいく描きたい……。
戸田
よし、これもやってみましょう。いま見せていただいた感じだと、大事なのは、「隠れている部分も描くこと」。こうすることで動きが出て、もっともっとよくなるんじゃないかなと思います。
清水
がんばります! どうしたらいいですか?

(次回につづく)

絵を上手に描くコツまとめ
1.描く対象をしっかり見て、いちばん「特徴」の部分はどこか考える
2.描く前に「アタリ」をつける
3.まずは輪郭をとって、次に「中心」になるものを描くとバランスがとれる

次回予告
なんと、清水さんの描いた絵が、こんなに劇的に変わりました!

清水さんの描いたBEFORE
清水さんの描いたAFTER

どんなふうに描けば、うまくいくのか? 次回も細かいコツが満載です。乞うご期待!

撮影:鈴木江実子/文:池田(所員)
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