運動会直前!子どもの足が速くなるコツ【後編】

2017.09.09
「運動会の徒競走で1位をとりたい……」そんな息子、いぶきの願いを叶えるべく、『ペンギン飛行機製作所』の所員、新井が立ち上げた超私的プロジェクト。足を速くしてあげたいのに、父親にはそのノウハウがない……。本を読んで勉強するにも時間がなさ過ぎる……。困り果てた父親は、息子を連れて、ランニングコーチの梅原望先生(通称のん先生)を訪ねました。

いぶきの50メートル走のタイムを計ってみると「9秒23」。徒競走で1位になるためには、どうしても8秒台が必要です。のん先生に「3つの秘訣」を伝授され、「1週間後、もう一度タイムを計るので、それまで親子で特訓してきてください」と言われたのでした。

前編」、「中編」とお届けしてきたこのかけっこ企画もいよいよ後編。今回が最終回です。いぶきは9秒の壁を破ることができたのでしょうか。親子で全力で駆け抜けた1週間。まずは、その特訓の様子から、どうぞ。
新井
よし、じゃあ昨日のん先生に教わったことの復習ね。ひとつひとつやっていこうか。
いぶき
うん……。
新井
どうした? テンション低くない? おなか痛い?
なんだか疑心暗鬼の表情
いぶき
お父さんじゃなくって、のん先生に教わりたい。
新井
(このやろう……)のん先生には来週、タイム計ってもらうからね。それまでに教わったことをちゃんとできるようにしておこう。
いぶき
うん。がまんするよ。
新井
が、がまんって……。がんばろうぜ。

復習!足が速くなる3つの秘訣

新井
じゃあおさらい! 足が速くなる秘訣ってなんだったっけ?
いぶき
腕の振り方!
新井
そう! 腕は大きく振るんじゃなくて……?
いぶき
うしろに大きく引く!
新井
そう! いいね。走るときの手は「グー」じゃなくて、「軽くふんわりと開くくらい」だったね。あとはなにかあったっけ?
いぶき
姿勢をよくすること!
新井
(けっこう覚えてるな……)。よし、もう一度やっておこうか。まずはお父さんの正面に「気をつけ」で立って、そのまま体を前に倒して……。そうそう、支えてあげるから前に倒れるような感じでね。
いぶき
ちゃんと支えててよ! こわいから!
新井
大丈夫! しっかり倒すんだよ。じゃあこの状態で、ももを上げてみて!
いぶき
こうかな……。
あっ! お尻がうしろに残ってる。父親を信用してない!
新井
お尻が残って「くの字」になっちゃってるよ。もっと、体全体がまっすぐになるように前傾してきて。絶対に支えるから!
いぶき
こわいなあ。
新井
8秒台を出すためだ! がんばろう。
前傾がいい感じになってきた
新井
そうそう。いいじゃん! もも上げして! 1、2、3、4、5、6、7、8、9、10……はい、OK! これはいい姿勢をつくるだけじゃなくて、スピードをあげるための、足の筋肉を鍛えるトレーニングにもなるんだって。
いぶき
へえ~。
新井
少しずつでもいいから毎日やろう。
いぶき
毎日? お父さん、ちゃんと毎日やってくれる?
新井
あぁ、まあ仕事が遅くならなければ……。
いぶき
仕事で遅いときはどうすればいいの?
新井
ひとりでやる方法も聞いてきたんだ。家のなかでもいいから、壁に両手をついて、いまくらいしっかり傾けた姿勢をとってみよう。その姿勢で、いまと同じようにもも上げするんだよ。
いぶき
うん、わかった! お父さんより壁のほうが頼りになるかもね。
新井
……。

足が速くなる裏ワザがあった!

新井
じつはさ、のん先生に足が速くなる裏ワザも聞いておいたよ。
いぶき
おっ、ほんと? やりたい……けど、お父さん、ちゃんと覚えてるの?
新井
まるで昨日のことのように覚えてるよ!
いぶき
(先生に会ったの昨日だし……)じゃあ教えてもらってもいいよ。
新井
……じゃあ教えてあげます。足が速くなるスーパートレーニング、それは「地団駄(じだんだ)」なんだって! 地団駄っていうのは、その場で足をバタバタさせることで、えーと、まずは、両足を腰の幅くらいに開いてみて。
いぶき
これくらい?
新井
そう。そうしたらダダダダっとその場で足踏みしてみて。
いぶき
(ダダダダ)こう?
まさか、息子に「地団駄を踏め」という日がくるとは……
新井
よし、OK! じゃあもう一度やろうか。次はダダダダっと踏んで、お父さんが手をポンって叩いたら10メートルくらい走ってみて。いくよ、(ダダダダ)………はい、「ポン」。走って!
いぶき
(走って)これでいい? 足、速くなるの?
新井
これはスタートの練習なんだって。昨日、のん先生から教えてもらったのは、「大きくスキップしたときのように、大きい歩幅で走る」だったよね。でも、スタートのときだけは、小さい歩幅のほうがいいんだってさ。
いぶき
なんで? 大きいほうがたくさん進むじゃん。
新井
えーっと、自転車に乗るときに、最初に5とか6とかのギアで走り出そうとするとすごく重いでしょ? 1とか2のほうが軽くて、最初は進みやすいよね。それと同じで、走るときも最初は「小さくて軽いギア」を使いなさいって教わったよ。
いぶき
ふうん。
新井
一番大きい歩幅を10とすると、スタートは4くらいで3歩、その後は8くらいまで大きくして進むようにしよう。
いぶき
10? 4? 8? よくわかんないよ……。
新井
……パパパッ! グングングン‼ って走れば速くなる!
いぶき
のん先生がそう言ってた?
新井
うん。そう言ってたよ。
いぶき
じゃあ合ってるんだ~。
新井
……。父親ってつらいな……。
ポイント!
○「地団駄」トレーニングでスタートを速くする
○スタート時の歩幅は4割くらいを3歩! その後8割くらい(大人のチェック目安)。子どもには「パパパッ→グングングン」と感覚的に教えてあげる
こうして練習すること1週間。息子はとってもがんばりました。うまくいかないとすぐ目に涙をためる、「超」がつくほどの負けず嫌いの性格。家内には「いったい誰に似たんだか……」とよく言われます。できることなら「8秒台」を出させてやりたい。でも、たとえタイムが出なくも努力したことをほめてやりたい。そんな心境で、のん先生のもとを訪ねました。さあ、いよいよだね、いぶき。

いよいよ計測の日がやってきた! 
果たして出るのか、8秒台!?



教えてもらった先生
梅原望(うめはら・のぞむ)さん
パーソナルトレーナー。2010年に立ち上げたランニングクラブ「Runbbits」で多くのランナーを指導し、市民ランナーから国際ランナーまで幅広く育成をしており、キッズの指導にも定評がある。自身がオーナーを務める東京都港区白金の「Personal Training Studio UNO」をメインに活動中。カイロプラクターの資格も持つ。
Personal Training Studio UNO
梅原
ついに、ついに、この日がやってきましたね。
新井
はい。ぼくたちの1週間が問われる瞬間です。
梅原
いぶきくん、緊張してるかな?
いぶき
すこし……。
梅原
リラックス、リラックス! 力みすぎちゃうと、せっかくの実力が発揮できないからね。おっ、新しい靴を買ったの?
いぶき
はい。速くなる靴、お父さんが買ってくれました。
前のソールと後ろのソール(緑の部分)が分かれているものはスピードが出るそうです
梅原
底の部分が二つに分かれているタイプの靴だね。短距離向きのいい靴だ!
いぶき
うん……。あのね、のん先生。
ささやくくらいの声で、しゃべりはじめる息子
梅原
どうした?
いぶき
ぼく、速く走りたい。8秒台を出したいよ……。
梅原
そうだよな……! がんばろうな! きみならできるよ、大丈夫!
新井
(涙目)
梅原
じゃあ走る前に、速くなるおまじないをしてあげるよ。手をギューッと力強く握ってごらん。強く強く……
いぶき
(ギューッ)
梅原
よし、そうしたらぱぁっと開いてー。そう、これでもう体からムダな力は抜けたはずだよ。あとはお父さんと練習したとおり、リラックスして走ろう。さあ、行こうか!
がんばれ、がんばれ、息子!!!!!

いよいよ計測!

あそこまで、駆け抜けろ!(こうしてみると、結構遠い……)
緊張の表情
父と先生も、思わず緊張!
梅原
位置について、ヨーーイ―――――スタート!!!!
梅原
ゴーーーーーーーール!!!!!!!!!!!!
新井
うわああ……なんか、いままで見たなかでいちばん速かった気がしますが……先生!!! 何秒ですか!?
梅原
……
新井
先生っ!!!!
!!!!!!
梅原
8秒97です!!!!!!
新井
おおおおおおおおおお!!!!!!! いぶき、8秒97!!
いぶき
ハア、ハア、やったー!!!!!!
梅原
おめでとう! がんばったね! よくやった!!!!
念願の8秒台達成! つぎなる目標は……?
梅原
いやー、すごかったね! おめでとう!
いぶき
ありがとうございます!
梅原
つづけていけば、もっともっと速くなれるからね。これからもがんばろう!
いぶき
先生、ぼく、もっともっと速くなる。リレーの選手になったら、また教えてください!
梅原
もちろん! 楽しみに待ってるよ! 運動会、がんばってね!
いぶき
はい!
新井
のん先生、本当に、本当に、ありがとうございました!(涙)
いぶき
ありがとうございました!
『子どもの足が速くなるコツ』まとめ
①3つの秘訣は「姿勢」「腕振り」「スキップ」
②スタートは「地団駄」で速くなる
②走る直前! ギュッと手を握って、力みを抜く
「子どもの足を速くしたい」だけど、「どうやって教えていいかわからない……」そんな父親の葛藤を、ランニングコーチの梅原先生に見事解決していただきました! まさか、本当に8秒台が出るとは……。プロの教え方のすごさには本当に驚きました! 息子との絆も、いっそう強くなったように感じます。みなさま、最後までお読みくださり、ありがとうございました!
がんばった! きょうはおいしいもの食べに行こうな!
撮影:鈴木江実子/文:新井(所員)
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