運動会直前!子どもの足が速くなるコツ【前編】

2017.09.01
『ペンギン飛行機製作所』の新井です。そろそろ運動会のシーズンですね。運動会といえば花形はやっぱり徒競走とリレー。運動が得意な子にとっては、ヒーローになれる大チャンスです!

でも、そこまで走るのが速くない子にはちょっと憂うつなイベントですよね。ぼくにも「いぶき」という小学生の息子がいまして、「徒競走で一番になりたい!」と思っているようなのですが、足の速い友だちが多くて……。親としては願いを叶えてやりたいところですが、ここで問題が……。何を、どうやって教えれば息子の足が速くなるのか全然わからないんです。そもそも、ぼく自身が速く走れるわけでもないのに。

そこで、「プロに聞くしかない!」というわけで、子どもの足を速くすることで評判のランニングコーチ、梅原望先生のもとに親子そろってうかがいました。そこでお聞きしたのは、目からウロコの「走り方」と「指導法」でした。はたして息子・いぶきの足は速くなったのか。最後に待っていたのは、驚きの結末でした! 『ペンギン飛行機製作所』が運動会直前に3回にわたってお届けする緊急企画。どうぞお見逃しなく!

教えてもらった先生
梅原望(うめはら・のぞむ)さん
パーソナルトレーナー。2010年に立ち上げたランニングクラブ「Runbbits」で多くのランナーを指導し、市民ランナーから国際ランナーまで幅広く育成をしており、キッズの指導にも定評がある。自身がオーナーを務める東京都港区白金の「Personal Training Studio UNO」をメインに活動中。カイロプラクターの資格も持つ。
Personal Training Studio UNO

運動会で子どもをヒーローにしたい!

新井
こんにちは。『ペンギン飛行機製作所』の新井です。梅原先生、本日はよろしくお願いします!
いぶき
こんにちは!
梅原
よろしくお願いします。「梅原先生」ってちょっと照れますね(笑)。子どもたちには名前の「望」からとって「のん先生」って呼ばれてますので、そう呼んでください。
いぶき
はい、のん先生、よろしくお願いします!
梅原
うん。元気よくていいね! いま何年生かな?
いぶき
三年生です!
梅原
三年生か。学校は楽しい?
いぶき
はい、楽しいです。
梅原
そうかあ、それはよかった! 今日は一緒にがんばろうね!
いぶき
はい!
まずは、悩み相談から
新井
のん先生は子どもたちに走り方のレッスンをしてらっしゃるんですよね?
梅原
はい、お父さんやお母さんから「うちの子の足を速くさせたい」という相談をいただくことが多いですね。やはり運動会直前がとくに多くて、「リレーの選手に選ばれるようにしてやりたい」「徒競走で1位をとらせたい」というリクエストをよくいただきます。
新井
まさに、ぼくも同じです。いぶきはめちゃくちゃ負けず嫌いでして、「徒競走でぜったい1位になりたい!」ってずっと言ってるんです。でも、なにを教えたらいいのかわからなくて……。
梅原
いぶきくん、1位になりたいの?
いぶき
なりたいです。
梅原
そうかあ。それなら先生も力になってあげたい。たまに親ごさんがそう願っていても、お子さんはそれほどでもない、ということがあるんです。こういうときは、お子さんにはあまり無理をさせたくありません。でも、お子さん本人が「速くなりたい」と望んでいるのなら、ぼくも力になりたいし、なれると思います。
新井
ありがとうございます‼
梅原
ちなみに、お父さんは運動会のヒーローでしたか?
新井
いえ、ぼくも子どもの頃から、足は速くなくて……。運動会では1回もヒーローになれたことがなくて、すごく悔しかったんです。だから、いぶきをどうにかヒーローにしてやりたくて。
梅原
そうでしたか。わかりました。がんばりましょうね!
新井
はい! それで先生、「速く走るための必勝法」って、あるんでしょうか? もうすぐ運動会なので、ぼくたち親子はあせってまして……。何か月もかかるようだと間に合わなくなっちゃう……。
梅原
必勝法、あると思いますか?
新井
あっ……やっぱり、そんなうまい話はないんですか……?
(ないの……?)
梅原
それが、あるんですよ。
新井
あるんですか! いぶき、あるって!
いぶき
やった!
梅原
もちろんお子さんによってちがいはあるのですが、「ここに気をつければ速くなる」というポイントがあります。
新井
(なんでいままで誰も教えてくれなかったんだろう……)ぜひ知りたいです! 教えてください!
梅原
もちろんです! でもそのまえに、いぶきくんのいまの走り方をチェックしましょう。まず50メートルを走ってみようか。準備体操はさっきやってたね?
いぶき
はい! やりました!
梅原
よし、じゃあ走ってみようか。タイムも計るからね。位置について……
梅原
ヨーーーイ、スターット!!
力いっぱい走ります! 顔も力いっぱい!
梅原
はい、ゴール!!!! なかなか速かったね。タイムは……
梅原
9秒23! どうかな?
いぶき
ハア、ハア。前に計ったときと同じくらいです。仲のいい友だちで、8秒台で走る子がいるから、もっと速くなりたい……。去年の運動会も、最初はよかったのにあとからどんどん離されちゃって2位だったし……。
梅原
うん。わかった! ちゃんと走り方を直せばもっと速くなるよ。8秒台目指してがんばろう!
いぶき
はい!
新井
がんばろうな!
梅原
じゃあ、さっそくはじめましょう! まず、最初に核心をお話しちゃいます。速く走れるようになるためには、3つの秘訣があるんです。この3つさえ身につければ、見ちがえるように速くなりますよ。
新井
3つ! たった3つでいいんですか?
梅原
はい、3つです。
「3つ!」なぜそんなに怖い顔に……
新井
いったいどんなトレーニングをすればいいんですか?
梅原
トレーニングは必要ありません。
新井
えっ!!!
梅原
厳密に言うと、トレーニングをしたほうが速く走れるようになるのですが、それ以前の、基本的な「走り方のコツ」を身につけられれば、すぐに効果が出ますよ。
新井
なんと……! 先生が神さまに見えてきました。さっそく教えてください!

【秘訣1】一生懸命走ると遅くなる⁉ブレーキをアクセルに変える姿勢

梅原
速く走れるようになるための秘訣、その1。それは「姿勢」です!
新井
走っているときの姿勢ですか? 足の動かし方とかじゃないんですね?
梅原
そうです。走るときの姿勢で、新井さんご自身がなにか気をつけていることってありますか?
新井
あまり考えたことがなかったです……。ただ速く走ろう走ろうと、一生懸命走ってます。
梅原
おっ! いい答えですね!
新井
やった!
梅原
「悪い見本」としてのいい答えです(笑)。
(いぶき、そんな顔で父さんを見ないでくれ)
梅原
もちろん、一生懸命ってすごく大事なことです。でも、これが速く走る敵になってしまうことがあるんです。
新井
一生懸命走るのがいけないって、どういうことでしょうか?
梅原
速く走ろうとする気持ちが強すぎると、だんだん体が前のめりになってしまいます。
新井
ダメなんですか? 前のめりのほうが速く走れる気がするんですが……。
梅原
前傾姿勢が悪いわけではなくて、胸が前に突きでて、お尻がアヒルみたいに置いていかれるような形になってしまうことが問題なんです。そうなると、お尻が重くて、前に進まないんですよ。
お尻がうしろに残った姿勢。これだと前に進まない
新井
なるほど。前傾姿勢ならいいのかと思ってました。
梅原
実際に体感してもらいましょうか。ちょっと新井さん、立ってください。
新井
はい。
梅原
ぼくが新井さんの正面に立って、両手を前に伸ばしていますので、新井さんは「気をつけ」の姿勢から、体をまっすぐ前に倒して、ぼくに体重を預けるようにしてください。
(ちょっと怖い……)
梅原
新井さん、ぼくのことを全然信用してくれてないですね(笑)。「まっすぐ前に倒れてきてください」と言ったのに、お尻がうしろに残って「くの字」みたいになってしまっています。これが「悪い姿勢」です。
新井
たしかに重心がうしろに残っているのを感じます。これだとどうしていけないのでしょうか?
梅原
そのまま、もも上げをしてみてください。足の裏のどこから着地していますか?
新井
(もも上げしてみて)かかと……ですね。
梅原
ですよね。これは「ヒールストライク」という、典型的なブレーキ走法なんです。
新井
ブレーキ走法?
梅原
はい。前に進もうとしているのに、かかとから着地することでうしろに戻ろうとする力が働いてしまって、せっかく前に走っているのに、着地のときにわざわざブレーキを踏んでしまっている状態です。
新井
そうかあ、それは効率が悪いですね。
梅原
では今度こそ、ぼくのことを信頼して、倒れこんできてください。
ぐいっと前に
梅原
そう! そうです! そのままもも上げをしてみましょう。
息子にいいところを見せなきゃ……
新井
けっこうしんどい……!
梅原
着地はどうなってます?
新井
あっ! つま先……から……ですね……!
梅原
はい。短距離走での着地は、つま先からがベストです。細かく言うと、つま先から着地して、かかとを瞬間的にポーンと蹴りだすようなイメージですね。
新井
な、なるほど……。こうやってもも上げしてると……、よ、よくわかりますね(先生、まだやめちゃいけないんですかね……)
梅原
ただ、これは正しい姿勢が身についていないと、うまくいかないはずです。お尻に体重が残らないように、体を10~20度前傾させる。これが速く走る姿勢の基本です。あ、もう、もも上げやめていいですよ。
新井
つ、つ、つかれた…………。こんなんでいぶきに教えられるのか……。
日頃の運動不足が露呈する父……
【ポイント】
○前傾姿勢はOK! ただし、お尻は絶対にうしろに残さないように!
○「正しい姿勢」から生まれる「正しい着地」は、つま先から!

【秘訣2】腕は大きく振ってはダメ!
加速を生み出す正しい振り方

梅原
新井さん、倒れてる場合じゃないですよ。いぶきくんが見てますよ。速く走る秘訣その2をお伝えしますから立ってください!
新井
そうでした。父ちゃん、がんばらなきゃ。はい、秘訣その2!
梅原
「腕の振り方」です!
新井
あっ、それが大事なのはわかるかも! ぼくもいぶきには「大きく腕を振るように」といつも教えてます。
いぶき
そう。いつも注意されるから、ちゃんと大きく振ってます。でも、あんまり速くなってる気がしないです。
梅原
じつは……それ、お父さんの教え方がちょっとよくないかもです。さっきのいぶきくんの走り方を見て、それを感じました。
新井
え! そうなんですか⁉ どうして腕を大きく振っちゃいけないんですか?
次回につづきます

次回予告
なぜ、腕を大きく振ってはいけないのか? 次回その秘密が明かされます。さらに、3つ目の「秘訣」とはなにか? のん先生と新井親子の奮闘はつづきます。

撮影:鈴木江実子/文:新井(所員)
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