野菜特集②ブロッコリーの鮮度を保ちたい
2017.09.14
カラダにいいから、という理由で食べている野菜。でも、そのひとつひとつをしっかり味わっているかというとギモンが残ります。「野菜をもっとおいしく味わいたい!」そんな想いを胸に『ペンギン飛行機製作所』の所長の黒川は、以前から親交の深い石川範子さんの元を訪ねました。
石川さんは、長年、NHKの人気番組『ガッテン!』の料理放送回の指揮をとり、多くの一流料理人からの信頼もあつい、食のスペシャリストです。
「野菜って、調理の仕方を変えれば、ほんとはもっとおいしいんですよ!」と石川さん。ガッテンならではの科学的な視点と、双子をもつ忙しい母としての視点で、野菜の「不都合」を解決して「うれしい」に変えるワザの数々を教えてくださいました。第2回は、前回に引き続き「ブロッコリー」について。今回は保存法のお話です。
石川さんは、長年、NHKの人気番組『ガッテン!』の料理放送回の指揮をとり、多くの一流料理人からの信頼もあつい、食のスペシャリストです。
「野菜って、調理の仕方を変えれば、ほんとはもっとおいしいんですよ!」と石川さん。ガッテンならではの科学的な視点と、双子をもつ忙しい母としての視点で、野菜の「不都合」を解決して「うれしい」に変えるワザの数々を教えてくださいました。第2回は、前回に引き続き「ブロッコリー」について。今回は保存法のお話です。
石川範子
1972年生まれ。民放番組のディレクターを経て、NHK『ガッテン!』で「食」専門ディレクターとして関わり19年。多くの料理放送回の製作において中心的役割を果たし、放送後に大反響を呼ぶこと多数。科学の視点を武器に、「どうすればおいしくなるのか?」を追究しつづけるその姿に、多くの一流料理人たちが信頼を寄せている。双子の母でもある。
1972年生まれ。民放番組のディレクターを経て、NHK『ガッテン!』で「食」専門ディレクターとして関わり19年。多くの料理放送回の製作において中心的役割を果たし、放送後に大反響を呼ぶこと多数。科学の視点を武器に、「どうすればおいしくなるのか?」を追究しつづけるその姿に、多くの一流料理人たちが信頼を寄せている。双子の母でもある。
目次
第1回 ブロッコリーがベチャッとする
第2回 ブロッコリーの鮮度を保ちたい
第3回 ジャガイモは茹でるか、レンジか
第4回 おいしい大根に出会えない
第5回 里いもの皮をむくのがめんどう
第6回 レンコンってどんな味だろ?
第7回 甘いトマトの見分け方って?
黒川
前回のお話で印象的だったのは、食材を料理の「材料」としてあつかうのではなくて、食材そのものの良さを引き出すために調理することが大切だということでした。
石川
はい、引き出す。良さを「壊さない」という表現でもいいかもしれませんね。
黒川
たとえばブロッコリーの場合、それは「蒸し煮」にすることで叶うとお聞きしました。そうすればベチャッとしたブロッコリーではなくて、他の野菜にはない、ブロッコリー独特の食感と旨味を味わえると。
石川
ブロッコリーって、すごくいい子なんです。まず、緑色が鮮やかだからサラダや炒めもの、シチューなんかに彩りをつける意味でとても使い勝手がいいでしょ。栄養面もバツグンで、ビタミンC、B1、B2、葉酸の100g当たりの含有量は、野菜や果物のなかで断とつのトップです。
黒川
はい、健康にとてもいいイメージがあります。
石川
でも、そういう健康面を理由に食べるけれど、本当においしいと思って食べているかというとそうじゃないケースが多いから、それがすごくもったいないと思うんです。本当はすごくおいしい野菜ですから。
黒川
そんなおいしくて、健康寵児のブロッコリーには「鮮度」っていう弱点があると、前回お聞きしました。だから保存法が大切だと。
石川
そうなんです。収穫後の温度管理がうまくできないと、あっという間に鮮度が落ちちゃうんですよ。常温に置いておいたらビタミンCは3日くらいで半分まで減っちゃいますし。
黒川
でも、さすがに買ってきて常温で置いておく人はいないですよね? 冷蔵庫に入れる。
石川
ええ、そうなんですけど、冷蔵庫のなかならどこでもいいかというと、そうじゃありません。
黒川
野菜室に入れておけばいいんじゃないんですか?
石川
アメリカ産のブロッコリーはたいてい、日本に20日以上かけて輸送されてくるんですけど、鮮度は落ちてないんです。じつは、氷詰めの状態で運ばれてくるんですよ。
黒川
つまり……?
石川
0度で保存されてくるということです。これがもっとも栄養を損なわずに鮮度をたもてる保存法なんです。
黒川
ということは、冷蔵庫のなかだと……
石川
魚や肉を入れる「チルド室」です。
黒川
ああ、チルド室ですか。野菜室じゃないんだ。
石川
はい、ブロッコリーはチルド室で保存してください。そのとき、乾燥をふせぐために、ポリ袋にいれてしっかり口を閉じておくとさらに効果的ですよ。
ポリ袋に入れてチルド室にいれます
黒川
保存は0°、調理は蒸し煮ですね。とってもよくわかりました。こうやって、ひとつの野菜についてじっくりお聞きしていると、ふだん、じぶんが料理をするときに、いかに野菜を単なる「材料」としてあつかってしまっていたかがわかります。
石川
そうなんですよね。「材料」ではなくて、「主役」なんです。
黒川
そうかあ、たしかに主役ですね。ぼく自身は本をつくる仕事もしていまして、それこそ料理本をたくさんつくってきました。料理本って、「材料」っていう項目があるでしょ。そこに「食材」と「調味料」が書かれている。読者がつくりやすいようにこのふたつを一緒にして「材料」としてしまっていますが、石川さんのお話をお聞きしていて、野菜や肉、魚は「食材」、そして調味料を「材料」と分けたほうがいいのかもな、と感じました。
表記は「材料」でいいのかしら・・・
石川
はい、それはテレビの世界も同じです。もちろん、読者や視聴者が料理をつくりやすいように表記していくのが私たちのつとめなので、その表記スタイルが間違いだとはぜんぜん思わないんです。でも、気持ちとしては、食材は単なる「材料」ではなく、むしろ「主役」だと思っています。
黒川
はい、本当にそうですね。
石川
私、双子の子どもがいるんです。4歳の男の子と女の子。それで、二人を通わせている保育園に、毎日、子どもたちが家で何を食べたか出さないといけないんです。
黒川
双子ちゃんかー。かわいいなあ。えーと、献立ノートみたいな感じですか?
石川
献立というほど細かいものじゃないんですけど、とにかく食べさせた料理を書いて提出するんです。保育園としては子どもたちの健康管理の責任もあるから、必要な情報なのだと思います。それでね、ふつうはそこに「肉じゃが」とか「ハンバーグ」とか書くわけですよ。
黒川
「料理名」を書くわけですね。
石川
そうです。でも、私は「ブロッコリー」「きゅうり」「豆腐」みたいに、食材ばかり羅列してるんです。最初は先生に、このお母さん全然料理しないで、食材を生で食べさせてるのか、と思われていたと思います(笑)。
黒川
あー、その食材の羅列を見て、ひとつひとつの食材の良さを引き出してるんだな、とは思いませんよね(笑)。
石川
でしょ。でも、子どもたちには、できるだけ食材そのものが持つ旨味や食感を知ってほしくて、最低限の調理で食卓に出すようにしてるんです。だから、ノートに書くと、そうなっちゃう。
黒川
そのエピソードに、石川さんの食材への想いがあらわれているような気がします。この連載をはじめてよかったなあ。
石川
ところで、次回の野菜は何にしましょうか? 黒川さんが一番お好きな野菜にしたらどうですか? どの野菜がお好きなんです……
黒川
ジャガイモです‼︎
石川
食い気味に答えるくらい、迷いなしですね(笑)。
黒川
はい、ジャガイモのない人生なんて、クリープのないコーヒーみたいなもんですよ。
石川
(ふるい……)
黒川
えーと、じゃあ、次回はジャガイモについてお聞きします。よろしくお願いします!
石川
はい! 承知しましたー!
次回につづきます
目次
第1回 ブロッコリーがベチャッとする
第2回 ブロッコリーの鮮度を保ちたい
第3回 ジャガイモは茹でるか、レンジか
第4回 おいしい大根に出会えない
第5回 里いもの皮をむくのがめんどう
第6回 レンコンってどんな味だろ?
第7回 甘いトマトの見分け方って?
撮影:鈴木江実子/文:黒川(所長)