冬こそ、かき氷!【インタビュー・後編】

2018.11.01
大好評の「冬こそ、かき氷!」。後編は、冬のかき氷を食べるために知っておきたいことや、おすすめのお店を聞いちゃいました!

大野美和(おおの・みわ)さん
1976年生まれ。高知県出身。中央大学商学部卒。PC系の出版社「アスキー」を経て別の出版社へ。テレビ誌、まんが誌を経て現在は辞書の編集。趣味は旅行と食べること。直近の45ヶ国目はウズベキスタンを訪問。食べることも好きで、貯金をすべて使い果たし、クレジットカードが止まったことも。胃の中にフェラーリが入っている。

かき氷に、「食べ方のお作法」ってありますか?

──
冬のかき氷を実際に食べてみたくて仕方なくなったんですが……気になるのが「お作法」なんです。もし私が冬のかき氷屋さんに行ったときに、おいしく食べられて恥をかかないような「食べ方のお作法」ってあるんですか?
大野
溶けないうちに食べることだと思います。削りがふわふわであればあるほど、すぐに溶けてしまうので、友だちと行っても、自分のが来たら待たないで食べる!
──
たしかに。すごく繊細な食べ物ですもんね……緊張するなあ。どこから食べはじめたらいいんですか?
大野
私はふつうに、上から食べてます。
──
ふつうでいいんだ、よかった(笑)。ほかには、まずシロップだけ食べるとか……ラーメンで、「最初にスープを飲むと味がわかる」みたいなことってありますよね? そういうのはないですか?
大野
大丈夫です、普通に食べればいいんですよ。気にするのは、来たらすぐ食べることだけ。
──
やっぱり、削りたてがおいしいものなんですか?
大野
そうですね。削った瞬間から溶けていっちゃいますからね。
ぺんたも、溶けないうちに、いただきます!
──
儚いですねぇ。あっ、かき氷って、混ぜたらいけないんでしょうか? 屋台のかき氷だと、混ぜて飲んだりしてるんですが……。
大野
混ぜてもいいと思いますよ。あっ、でも、たぶん、混ぜていい氷といけない氷があると思います。
──
混ぜていい氷と、混ぜちゃいけない氷? 何が違うんでしょうか?

かき氷には、宇宙がある!

大野
混ぜちゃいけないかき氷屋さんは、器の中に宇宙があるの。
──
宇宙?
大野
あっ、自分でもヤバいことを言ってるのはわかってます(笑)。ちゃんと説明します。あのね、混ぜちゃいけないかき氷は、同じように見えて、5段階くらいに味がかわっていってるんですよ。
──
えっ!?
大野
たとえば、舌が冷たくなって味を感じられなくなってきてもずっとおいしく食べられるように、シロップの味が下に行くほど濃くなっていたりとか。あとは、間に別の何かを入れてたりとか。一杯の中で、味に変化を出してることがあるんです。
──
えええええっ! そんな仕掛けが!!! すごーーい!
大野
そうなんです! かき氷のこんな小さい器の中に宇宙があるんですよ! ほんとうに、気付かないこともあるような仕掛けなんです。気づかなければ、たんにおいしいね、で終わっちゃうんですけどね。
──
すごいなあ!!! かき氷がそんなに繊細につくられているなんて。ますます食べてみたい……!
大野
すこしずつ味を変えていったりとか、下の方だけちょっとレモン味がついてるとか、そういうことがあるんです。だから、混ぜると、宇宙が混ざっちゃう。
──
それはまずいですね。宇宙が混ざっちゃまずいです。
大野
もちろん、暑いときにひんやりとしたくて、お水を飲むんじゃなくてかき氷を食べる、みたいなときにはザクザク混ぜながらがりがり食べるのがおいしいと思います。でも、冬のかき氷は、暑いから食べるんじゃなくて、おいしいから食べる氷なのだと思います。
──
そっかー、体を冷やすために食べるわけじゃないですもんね。
大野
そうなんです、おいしいデザートとして食べています。目的が違うんですよね。

冬のかき氷の世界は、どうやってできたの?

──
こういう新しいかき氷というか、「冬のかき氷の世界」って、いつごろからできたんでしょう?
大野
これは私の感覚なんですけど、「埜庵(のあん)」というお店が、新しいかき氷界を作った、と思います。
「埜庵」の本
──
「埜庵」っていうのは、どこにあるんですか?
大野
神奈川県の湘南です。2003年オープンかな。ここが、かき氷ブームの立役者というか、心のよりどころみたいな店なんです。
──
かき氷界の心のよりどころ?
大野
精神的支柱というか。もしこの店になにかあったら、たぶんかき氷好きはお通夜みたいな気持ちになって、喪に服すと思うよ。……嘘でしょって思ってますよね?
──
いえいえ! そんな! でも、なんでそんなに伝説的なんですか?
大野
「埜庵」の何がすごいって、かき氷専業店を通年ではじめたとか、言い出せばいろいろあるんだけど、まずは値付けだと思うんです。一杯で、700円とか800円とかの高い値段をとったことです。
「埜庵」さんのいちご
──
あっ、それまでは、そんなお店がなかったんですね?
大野
それまで、かき氷といえば300円とかの屋台がほとんどだったはずです。そのなかで「こんな高いお金だして食べる人なんていないよ」って、きっとすごく言われたんじゃないかと思うんです。
──
たしかに。ふつうなら、ちょっと高いかなって感じますよね。
大野
そう思いますよね。でも、その値段をつけたからこそできることって、いっぱいあるわけです。シロップに工夫をしたり、氷にこだわったり、人を増やしたり。利益が出せるからこそ競合も参入してきて、切磋琢磨してどんどんおいしいかき氷ができている。それはやっぱり、この値段をつけたことがすごいんだと思うんです。
──
なるほどー!!!!!! 300円か400円かというところの殻を破った。そこがすごい革命だったわけですね。
大野
そう、そこを覆してくれたのが、「埜庵」さんのすごいところなんじゃないかなって思います。そして、それでもやれるんだっていうのを見せてくれた。そういうかっこよさがあるんです。
──
なんか、冬のかき氷にすっごいロマンを感じてしまった……。応援する意味でも、経験してみたいという意味でも、ぜひ、冬のかき氷、食べてみたいと思います〜!
大野
ぜひ冬こそかき氷を! 今日は聞いてくれてありがとうございます。本当に嬉しかったです。あ、でも私、そんなにマニアじゃないですよ。いやほんとにほんとに。
ぺんたも、冬のかき氷をたべてみたくなりました!!

大野さん的おすすめ店リスト

冬のかき氷を始めるならこれを食べてみるべし!という、大野さん的おすすめリストを教えていただきました♪ 残念ながら、冬のかき氷はまだまだやっているお店が少なく、東京都内が中心になってしまうそう。ただし、素敵なお店ばかりなので、旅行がてら食べてみるのもオススメです!

★定番! いちごみるくを食べるなら?
ひみつ堂
「谷中にあって、デートのついでにちょっと行けて、冬だったらそんなに混んでないし、ビジュアルもいいです」

ヒミツのいちごミルクX’masバージョン

★ケーキみたいなかき氷を食べてみたい!
セバスチャン
「すごくかわいいいし、冬はそんなに混んでいません。いちごのショートケーキもかわいいし、クリスマスだとガナッシュなんかも出ます」

いちごとホワイトチョコレートのショートケーキ クリスマスバージョン(2017年)
ブッシュ・ド・ノエル(2016年のクリスマスバージョン)

★果物のシロップのおいしいものが食べたい!
雪みるく
「果物屋さんがやっているので、フルーツソースが最高においしいです。『ショコラベリー』というメニューが美しい。ちなみに、となりに果物を売ってる所もあるので箱買いして帰ってもいいと思います」

ショコラベリー

おまけ★冬のかき氷語辞典

冬のかき氷を極めるなら知っておきたい、「かき氷語」の辞書をつくっていただきました♪
これをつかって会話すれば、ちょっとかっこいい、かも!

【おいみつ 追い蜜】シロップの量を調節できるように店から提供される、小さな別皿に入った同じ味のシロップ(蜜)。または追加注文できるシロップやミルク。できるお店とできないお店がある。『メロン氷にヨーグルト練乳追い蜜とはいいチョイス』

【けずり-て 削り手】かき氷を削る人のこと。『あの店は削り手のばらつきがひどい』

【てん-しゅ 店主】個人経営のかき氷屋のオーナーのこと。『本日イベントのため臨時休業します 店主』

【す-ごおり/す-ひょう 素氷】シロップをかけない、削った氷だけの状態のこと。削り手の腕がよく分かる『素氷に自分でシロップかけるタイプのかき氷』

【じゅん-ぴょう 純氷】製氷工場で作られた氷のこと。24時間、48時間かけて凍らせたものが一般的だが、最近は72時間のものも。『純氷も天然氷もどっちもおいしいね』

【てんねん-ごおり 天然氷】自然に凍ってできた氷のこと。『天然氷は固くて削りやすいともっぱらの噂』

【ほうかい 崩壊】かき氷を崩してしまうこと。器から出ている部分が多いかき氷や、スプーンが厚めのものや、食べる前に長く撮影したりすると起こりやすい。

【リスト】開店前に店の前に出ている紙に名前を記入し、席を予約すること。店によって記入法が違うので、よく但し書きを読むことが大切。ずっと行列しなくて良いのでありがたい。『今日は開店1時間前にリストが出るらしい』

【せいりけん 整理券】夏場など行列が予想される繁盛店で配られる。時間指定できる場合もある。オープン前になくなってしまう店もちらほら。『整理券、もうなくなっちゃったって!』

【ついかちゅうもんふか 追加注文不可】はじめの注文時に全部注文しなければならないこと。あとから「やっぱりもう一杯食べたい」ができないので注意。『ここは追加注文不可だから、マジで真剣に考えよう』

【はいすうせいげん 杯数制限】夏場の激混みの時期に発令される。注文が1杯または2杯までに限定されるので、多くの人が食べられるし、回転がよくなる反面、マニアは不完全燃焼。『杯数制限がなければあと2杯いきたかった』

【くり 栗】9月半ばから10月に出るかき氷メニュー。夏の終わりを告げる一品。熱狂ファンが多い素材なので、各店を食べ歩く人続出。栗メニューが出ると一時的に店が混む。『栗が出たわ、私たちの季節が来たわ』

【なつ 夏】かき氷がおいしいけれど、待ち時間が長いのでマニアはへこむ季節。毎年、「今年の夏はどうする?」が5、6月頃の合い言葉。自分で氷を作る自作派や、まだ混んでいない新店開拓派など人それぞれ。『夏のかき氷屋は待ち時間が長すぎて気が重い』

【つうねん 通年】一年中かき氷を提供すること。冬になり、どの店に行っても知り合いに会いはじめるとあなたもマニア。たいてい通年店の冬場はいつもの顔ぶれが座っている。

【ツイッター Twitter】即時更新できるWEBのミニブログ。かき氷屋は臨時休業や開店時間の変更がよくあるので、店の情報を確認するべし。忘れていくと辛い目にあうことも。『しまったTwitter確認し忘れてた、臨時休業だって!!!!』

取材させていただいたお店
氷舎mamatoko
東京都中野区弥生町3-7-9
好きが高じてかき氷店を開いてしまった店主は、年間1500杯以上食べるかき氷の女王。削るのが楽しくて仕方ない職人肌。人見知りの気があるので、あまり急に話しかけないこと。年間通して食べられる酒粕クリーム氷は必食。でもなんでもおいしいです

写真/鈴木江美子(大野さん、ぺんた、氷舎mamatokoの写真)
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